なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?
本文は、アガサ・クリスティー作「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」について、1ページも読まずにあらすじを推察してみる思考実験である。
さて、このタイトルから読み取れる事として、登場人物は少なくとも3名いる。
発言者(以下A)
被発言者(以下B)
エヴァンズ の3名である。
まず、エヴァンズに対して、何を頼もうとしたのか、から考えていこう。
口調の強さから、「エヴァンズなら解決が容易なのに、なぜ頼まんのだ」と
いった、苛立ちのようなものを感じとれる。
ここでポイントとなるのは、解決が容易という部分で、本来解決できるか分からないレベルで難易度が高い問題だった場合、ここまで高圧的な言い方にはならないだろう。
よって、個人では対処の難しい社会問題(年金問題や環境問題など)や、
人間の能力を超えた課題(ゴジラやピクルを撃退する)である可能性は低い。
一方で、重要性、緊急性が極端に低い問題と仮定すると、
それが解決できなかったからと言って、ここまでトゲトゲしく言う必要もないと考えられる。
よって、Aにとっては重要で、Bにとっても何らかの意味があり、
ただしAにとってほどには重要度の高くない問題、というバランスが妥当だろう。
上記を鑑みて状況を整理すると、
①Aにとっては大事な用件があり、その対応をBに依頼した。
②Aは用件を確実に遂行するため、Bが更にエヴァンズに依頼することを期待していた。
③しかしBは依頼の重要度を軽んじて自ら対処しようとし、結果として失敗した。
という状況が見てとれる。
結果として失敗しているわけであるから、
「失敗の余地のないほど簡単な依頼」というわけでもないが、
「自分でもできるのでは」と誤解を生じさせる程度に身近な問題である。
更に、エヴァンズなら失敗の余地なく完遂できると認識されていることから、
エヴァンズだけが持つ特殊技能が関係していると考えられる。
ここで一つの疑問が生じる。
Aは、なぜ直接エヴァンズに依頼しなかったのか、という疑問だ。
エヴァンズに対する信頼感から、本来は自ら依頼することもできる距離感であると考えられる。
そうしなかったのは、
「自ら対応するほどでは無いと考え、誰かに指示することで対処したかった」という思いの現れだろう。
以上の考察からポイントを洗い出すと
・AとBには上下関係がある
・Bはこの問題を自分で解決できると思ったが、想定以上に難しく失敗した
・Aは問題が解消しないと少しイラっとする
・エヴァンズは解決するための特殊技能を持つ
となる。
この4点から浮かび上がる本作のあらすじを推察してみよう。
■なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?
猛暑日の続く真夏のある日、オフィスのエアコンが止まってしまった。
10年は使っているので、壊れてしまったのかもしれない。
大型のショッピングモールができて以来、すっかり寂れてしまった商店街の片隅に、長年世話になっている街の電気屋エヴァンズがある。
私は部下に修理手配を依頼することとしたが…
義理と人情の下町ハートフルコメディー!
若きウェルテルの悩み
本文は、ゲーテ作「若きウェルテルの悩み」について、1ページも読まずにあらすじを推察してみる思考実験である。
本作品を選んだ理由だが、
「ゲーテって昔の人っぽいし、テキトーなこと書いても怒られないかな」という程度のもので、何か特別な思い入れがあるわけでは無い。
さて、ウェルテルである。
ウェルテルは若いとあるが、一体何歳なのかが出発点になりそうだ。
ウェルテルは悩んでいる。
悩んでいるくらいだから、若いと言っても、悩みを持てるくらいの若さだ。
人間、死ぬまで悩みは尽きないだろうから、問題は始まりの方である。
一般的に「悩み」を抱えるのはいつからだろう。
私で言うと4〜5歳ごろだろうか。
うまくトイレができず便座を汚し、母に怒られては、
「こぼさないようにトイレをするにはどうすべきか」と悩んでいた記憶がある。
しかし「ウェルテルがトイレを汚して怒られる話」では、後世に語り継ぐほどの内容でもないと思われるため、この線は無いだろう。
悩みをテーマにするくらいだから、
その悩みはそれなりに深刻なものである必要がありそうだ。
すると、少なくとも小学校くらいまでの悩みは、概ね小さなものが多いと考えられるため、年齢的な下限は14歳くらいと考えよう。
逆に、歳をとってから感じる様々な悩みについては除外する必要がある。
年金問題や生活習慣病に関するもの、毛髪の減少、嫁のヒステリーなどは除外するものとしたい。
そうすると、ここでいう若さの上限は20代半ば、24歳くらいまでと推察できるが、24歳の男といえば立派な大人である。
いい大人が「自分若く見えるけど悩みあるんすよねぇ」となると、職場の先輩が居酒屋で聞いてくれることはあっても、後世に語り継ぐような名作にはならないだろう。
そういった事を鑑みると、若さの上限は18歳くらいとするのが妥当だろう。
つまり、14歳〜18歳のウェルテルが悩んでいる話であるからして、間をとって16歳と仮定したい。
また、ウェルテルという名前から、性別は男性と推定したい。
根拠はさほどないが、言葉の響きが男性的と感じた。
おそらく「テル」が男性っぽさを醸し出しているのだろう。
ウィリアム・テル、GLAY TERU、ゴッドハンド輝(てる)など、テルとつく名はいつも雄々しい。
さて、ウェルテルは何に悩んでいるのか。
年代的には中高生、いわゆる思春期である。
思春期の悩みといえば、恋愛・進路・人間関係などが代表的だが、本作品が時代を超えて語り継がれていることから、おそらく人間の根源的なテーマ、恋愛に関する悩みであると推察できる。
16歳の青少年、ウェルテルが悩んでいる。わざわざ題名に「若き」とつけていることから、若さゆえに悩んでいるのであって、年齢を重ねていたなら解消される悩みであると考えられる。
つまり、経済的、社会的な不安定さに起因する恋愛の悩みであり、要するに「お金もしくは信用がない故の悩み」だろう。
「信用がなくて困る恋愛」に着目してみよう。
一般的にイメージされるのは、リーゼントに特攻服で恋人の両親に挨拶に行き、「お前のような奴に娘をやれるか!」と一蹴されるような場面だろう。
が、いまだに暴走族が確認されるのは千葉茨城あたりに限定されることから、ストーリー上はさほど重要な要素とならないだろう。
一方で経済的な問題は古代から現代まで続く普遍のテーマであるため、
これはやはり、お金の問題に起因する恋愛の悩みであるとするのが妥当ではないだろうか。
ここまでを整理すると
「お金がないことが課題となり、恋愛がうまくいかず困っている16歳の男性ウェルテル」という人物像が浮かび上がってくる。
では、この推察をもとに、本作品のあらすじを考えてみよう。
■若きウェルテルの悩み
16歳の少年ウェルテルは、ある日出会った女性に恋をする。
しかし女性は元暴走族であり、同じく暴走族であった恋人との関係を両親に認めてもらえず破局した過去を持っていた。
女性は現在キャバクラ嬢として働いており、ウェルテルが女性に気に入られるには巨額のカネが必要であった。
そこでウェルテルは金庫破りのプロ、コンピュータの専門家、斬鉄剣の使い手など仲間を募り、前代未聞の銀行強盗作戦を計画する。